今年初め、インドに滞在中、神殿舞踏(Temple Dance)をユニークな形で体験する機会がありました。


(10世紀に建造された東インドの太陽神殿のダンサーステージの壁には、無数の女性ダンサーが生き生きと踊っている。ダンサーTenleyと。)


世界各地で、古来の踊りのメイン形式であった、神殿舞踏は、
形を変えながら、今に引き継がれています。日本でいうと巫女舞や神楽など。


昨今は、その形式美にひかれるだけではなく、
「人という存在を超えた大いなるもの」に捧げるダンスとして、
踊る女性たちが、密かに増えています。


私が出会ったのは、神殿舞踏のフュージョンを教えるダンサー、
Tenley Wallece
Tenleyとは数奇な巡り合わせでした。


東インドには、64の女性神(Yogini)が祀られる、10世紀に作られた神殿が、人知れずあります。


複数のYoginiが祀られる神殿は1000年ほど前にインド各地で建設されました。
が、ムスリムなどの影響で徹底的に破壊され、
きちんとした形が残っているのは、インド大陸で1ヶ所のみ。
セイクリッド・フェミニン(聖なる女性性)のテーマを追う私は、
その寺院に、かねてから行きたいと思っていました。


偶然にも、彼女はこの神殿の女性神を体現するダンスの振り付けを作り、それを
教えるためにインドに来訪。3月には、実際の神殿を巡礼する旅を企画していたのでした。

(太陽神殿の美しい女蛇神と息を呑む精巧な彫刻。)

 


彼女のダンスのテーマは、

「神殿の鍵は、女性が握る」

というもの。


太古の昔、数多くの女性神の神殿が、女性神職の元に属していたものが、
歴史を通じて、女性たちの手から遠いところへ、離れていきました。


シンボルとして、女性が神殿の鍵を手にする、ということは、
男性と女性が、鍵を巡って戦いあう、ということではない、

女性の精神の解放と大いなるエンパワーメント

を、意味しています。


Tenleyのダンスレッスンでは、私含め世界各地からの全くタイプの違う8人の女性が、
慈悲の女神、享楽の女神、守護の女神、蛇神など、様々な顔と形を持つ女性神に、ダンスを通じて
つながる経験を持ちました。体を通じて、女神を表現するというのは、とてもありがたい経験である
とともに、相当チャレンジングなことでした。
女神という存在の持つ圧倒的なパワーを前に、踊りとして表現するだけでなく、
1人の人間としてどう生きていくか、までが、問われました。


女神に捧げる舞という形で、観客の前で踊った夜、ダンスを通じて神殿の鍵を開けることは、
言葉にできない、エンパワーメントの経験でした。


女性が踊り、踊りを通じて聖なるものとつながる経験をする、という事は、
とても、大きな事です。


世界を満たすエネルギー(サンスクリットでShakti)は、ヨガ等で、
全ての根源である、聖なるエネルギーとされています。
このエネルギーは、人の生命力でもあり、自然に満ち満ちているエネルギーでもあります。
世界が「男性性」と「女性性」の2極でできている、という思想によると、
Shaktiは、セイクリッド・フェミニンそのもの。


女性は、Shaktiを体で体現する存在。
Shaktiは自然に、 踊り という形をとって、体を通じて表現されます。


女性が根源につながって踊ることは、踊りを受け取る人々と、そして踊る女性自身の奥にある、
深い何かを揺り動かし、目に見えない変化のきっかけを作っていきます。